昨年参加した、一田憲子さんのライター塾の話。
一田さんのお家を取材して記事を書く、という課題があったのですが、
私の文章を読んで、一田さんがこう質問しました。
「塩井さんが、この取材から受け取ったものは何ですか?」
色々なインテリア雑誌に取り上げられている一田さんのご自宅は、
築40年を超える一軒家で、こだわって集めたという家具も、玄関に飾られた花も、
インテリア好きなら思わず「わー」と声を上げてしまうような、素敵なお家なのです。
その魅力を何とか文章で伝えようとしましたが、きっと書き手である私の「心揺さぶられた」感じが出ていなかったのだと思います。
自分が心動かされていないのに、どんなに言葉を重ねても、読み手の心を動かすことはできない。一田さんが仰りたかったのは、そういうことではないかと思います。
課題を再提出する機会を頂いたので、改めて考えてみたのですが、
そのとき私はインテリアに心向けるような余裕がなかったのだと思います。
以前は、インテリアがすごく好きで、雑誌を読み漁ったり、自分の部屋を見渡して、ここにこれを置いたら…と考えを巡らせたりしていました。
でも、忙しくなってくると、自分の部屋を見直すゆとりは無くなり、
しばらくインテリアから遠ざかっていたなぁと。
後で考えてみて、そこに気づいたのでした。
インテリアにはまっていた頃の自分だったら、きっともっと熱量の高い記事が書けたでしょう。
色々な仕事があるので、もちろんすべての分野に興味を持つことは正直難しいです。
「あんまり聞いたことないなぁ」とか「難しそうだな~」と思う仕事もあります。
でも、どんなジャンルであっても、心が動くような柔らかさを備えていたいと思うのです。
読み手のために文章を書くけれども、まずは自分がどこに惹かれたか。
一田さんは「真実」という言葉を使っていました。
取材対象者の言葉を聞き、感動したことを、「真実」にして共有する。
そのためには、まずライターが感動していなければならないし、
感動できるほど深く聞き出さなければいけない。
自分を出して書く仕事は少ないのですが、
例え完全に黒子に徹して書く記事であっても、
ライターが心動かされていなければ、良い記事にはならない。
そしてまた、心動く瞬間があるからこそ、この仕事はかけがえないとも感じます。
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