言葉の壁

海外で生活するとき、いちばん大きく立ちはだかるのが、言葉の壁ではないかと思います。

息子が現地の幼稚園に行き始めた当初、こんなことがありました。


昼食を家ですませ、幼稚園に戻ると、工作担当(?)の先生が教室に来ていて、

みんなにフランスの国旗を作って渡していたとのこと。

息子も欲しかったけれど、彼が行ったときにはもうほぼその作業が終わっていて、

先生にどう伝えていいかわからず、結局もらえなかったそう。


日本の幼稚園であれば、クラス全員に平等にいきわたるよう配慮してくれるのかもしれませんが、ここはフランス。

欲しいときには、自分で主張するしかないのです。


お迎えのとき、半分泣きそうになりながら、旗が欲しかったのに欲しいと言えなかったことを訴える息子。

「みんなが言ってるのを真似すれば?」と言うと

「だって、行ったときにはもう終わってたの」。

「お友達になんて言うか教えてもらったら?」(仲のいい子は何人かいたのです)

「だってフランス語だもん!なんて言うの!」と。そりゃそうだ。ごめん。


私はうーん、と考えて、でも何か言いたいことがあるときは、

頑張って伝えるしかないよ、と彼に話しました。

身振り手振りを使って、日本語でも何でもいいから、伝える努力をすること。

そうでないと、何も言いたいことがないんだと思われてしまう。


息子にそう話しながら、半分自分に言い聞かせていました。

来たばかりのころ、フランス語で伝える自信がなくて、たとえば欲しいものがあっても

素通りしてしまったり、言いたいことがあっても、笑顔で飲み込んだりしていたのです。

でもそれでは、自分の中にどんどんストレスが溜まってしまいます。

結果伝わらなかったとしても、とにかく伝える努力だけはすること。

それだけやって駄目なら、諦めるしかない。


息子がどれくらい納得できたかわかりませんが、ともかくその日は家に帰って、

割りばしと画用紙でフランスの旗を一緒に作って、ご機嫌はなおったのでした。


よく、子どもは海外へ行ってもすぐに慣れる、という話を聞きますが、

子どもは子どもなりに、色々なことに立ち向かっていかなければいけません。

そんなことを考えさせられた日でした。


あと、日本人は外国語を喋るとき、「うまく」喋れるかということを気にしすぎるんだろうなぁと思います。自分もそうなのですが……。

母国語ではないのだから、うまく喋れなかったり、発音が悪かったりするのは当たり前。

フランス人は外国人に慣れているせいか、そういうことをあまり気にしていないように思います。


言葉の壁は、今でもずっと悩みの種ではありますが、

ひとつひとつぶつかることが、自分のステップアップになると信じて、

とにかくできるだけ伝える努力をすること。

心に留めていることのひとつです。




あまおと

ライター、塩井典子のブログ。 一年滞在したフランス・ストラスブールの記録、ライターの仕事のこと、 子育てのことなど。

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